浮遊しながら堕ちてゆく。

思い出になったら救われるのか。

微かに残るぬくもりをも、

手放さなくてはならなかったとしても。

「あの夜に語った愛の未来図は自らの手で千切って棄てた」

かわす為にするべき事。

痛い痛い心の傷は、

かさぶたすらもなくなってしまった。

少しだけ硬くなったその場所に、

再度刃が突き刺さる。

その時がいつかは。

いつか終わりにしなくちゃ。

惰性で続けていた感情を、

終わらせなくちゃ。

過去は変わらない。

今更謝ったって仕方ない。
そんな風に思って救わなかった感情は、山ほどある。

「目の前の山がそのうち風化してなだらかな丘になろうとしても」

10月の空に思えば。

ああ、雨も風も冷たくて、
心の一部を凍らせる。
もう必要のないあの思い出も、
凍ってしまえばいいのに。

明確にできずに。

いまだに胸が痛むのは、恋が続いているからじゃない。

君を想っていたあの頃の日々を、

忘れてしまうのが怖くてしがみついているだけ。

「騒がれて手放したあのトキメキを 覚えているのが私だけでも」

停滞でしかない。

考えれば考えるほど、答えの出ない関係。
終わらせることも続けることもできないって、
当然わかっていた。

「吹く風に耐えられずなびく女郎花　この胸のように散り散りに揺れ」

答えはいずれ解る。

視線と心は一致しない。

恋い焦がれている人を見ていない可能性もあるし、

見つめている人に心を奪われていないことだってある。

あなたが私を見ていても、

いつだって不安なんだ。

前へ進むには。

全身で、愛を伝えていた。
届かなくても受け入れられなくてもいい、
ただあなたに伝えたかった。

なんてあの頃は言っていたけれど、
それが建前だったってこと、
あなたも私も当然気づいていた。

思い出される日々。

私のせいであの人が泣いてくれることはないだろうけど、

私の為にあの人が笑ってくれることはあるんだろうなぁと思うと、

もうそれだけで充分。

強がりでも負け惜しみでもなく、

やっとここまで来られたなぁ。

「辿り着くまでの道のり 恐らくは険しいほどに道は短い」